在宅介護って、とにかく人が足りない。
病院なら2〜3人で行う体位変換も、
家では1人。
70kgを超える父を動かすのは、
想像以上に大変だった。
そこで我が家の必需品が、
スライディングシート。
父の背中にシートを入れて、
横へずらしたり、
少し上へ引き上げたりする。
ベッドを起こしたり寝かせたりすると、
体は少しずつ下へずれてしまう。
そのたびに持ち上げるのは、本当に大変。
スライディングシートがあると、
軽い力で体を動かすことができる。
特に父は床ずれがある。
だから、余計な摩擦はできるだけかけたくない。
滑りのいいシートなら、
体を引きずることなく動かせる。
父の体にも優しい。
最初に買ったもの、気づけば2年間使っていた。
使ううちに、
だんだん滑りが悪くなってきた。
滑りが悪いと、
父を動かしにくいだけじゃない。
シートを引き抜くたびに、
せっかく整えた体までズレる。
「今、直したばかりなのに。」
結局、やり直し。
何のために動かしたんだ。
そんなことが何度もあった。
そこで買い替えたのが、
リハビリの先生も使っているスライディングシート。
……全然違った。
滑りがいいだけで、
体位変換がこんなに楽になるなんて。
買い替える時、父が言った。
「サービスの人たちも使うから、使いやすいものを用意して。」
ごもっとも。
その一言で、
介護用品は「家族が使うもの」じゃなく、
「みんなで使うもの」なんだと気づいた。
家族だけなら、
「ちょっと使いにくいね。」
で済むかもしれない。
でも在宅介護は、
訪問看護師さんや訪問リハビリの先生、
ヘルパーさんなど、
たくさんの人の力を借りて成り立っている。
だからこそ、
みんなが使いやすい介護用品を選ぶことも大切なんだと思った。
正直、看護師として病院で働いていた頃、
スライディングシートを使ったことはなかった。
その頃は、
気合いで持ち上げていた。
病院では人手があるから、気合いでも何とかできた。
でも在宅では、道具が人手の代わりになる。
だからこそ、
1人でもできる道具が必要だった。
しかも、使い方はとても簡単。
「ちょっと姿勢が曲がってるな。」
「少し上にずらしてあげよう。」
そう思った時に、
すぐ動ける。
もし毎回、
「よし、気合いを入れないと。」
と思う介助だったら、
きっと私は、
「少しくらい、このままでいいか。」
って、見て見ぬふりをする回数が増える。
でも、
道具があると介助のハードルが下がる。
だから、
「ちょっと直してあげよう。」
その一歩が踏み出せる。
その積み重ねが、
「見て見ぬふりをしちゃった。」
そんなモヤモヤが減る。
その代わりに、
「今日もやってあげられたぜ。」
そんな小さな達成感が残る。
そして、きっと。
その5分。
その10分。
少しでも父が楽な姿勢で過ごせる時間が増えたなら、
このシートを買ってよかったと思う。
介護用品は、
介護を楽にするためだけのものじゃない。
「ちょっと直してあげよう。」
その一歩を軽くしてくれる道具なんだ。
だから今日も、
父の姿勢を整えられた。
それだけで、私は十分うれしい。

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