在宅で、リハビリをすること
は父の強い希望だった。
手足を自分で動かせない父
動かさないと、動けなくなる。
拘縮してしまう。
私は、ずっと危機感を持っていた。
頚髄損傷になって、
病気自体は治らない。
どう、その身体と付き合っていったらいいか
リハビリの先生の存在がすごく大きかった。
リハビリ病院では、一日2回
みっちりリハビリをしていた。
家に帰ってきて
リハビリの時間
身体を動かしてもらう時間が減ることが怖かった。
訪問リハビリの先生は、
父の「困った」にすぐ対応してくれる。
家に帰ってきて、まず生活環境を作ってくれた。
父が押せる位置で、ナースコールの設置。
ベッドのコントローラーの位置
タブレットはどうやったらいいか・・
家って、病院より不便が多い。
そして、ずっと続く生活。
リハビリ病院に入院していた頃もそうだった。
手が握れないと、ナースコールも、ベッドを好きな角度に上げることも
ペンを持つこともできない。
コップを持つことも。
ちょっとのボタンも押せない。
なーんもできない。
でも、父はできている。
ベッドをコントロールして起き上がり
コップを使って、お酒も飲んでる。
髭剃りも、歯磨きもできる。
自分の好きなタイミングでお茶も飲める
タブレットをタッチペンで操り
孫に手紙を書いたり、しちゃう。
全部、父に合わせて
リハビリの先生が作ってくれた
父の自助具。
父の残った動きに合わせて
「どうしたらできるか」を一緒に考えてくれた。
お茶を自分の好きな時に飲めるって
自分の好きな角度にベッドが動かせるって
すごい
いちいち頼むほうも
いちいちやる方も
ストレスじゃん。
自助具があるから、父は家にいれる
父らしい生活ができていると言って過言じゃない。
先日も、
「ベッドのコントローラーの金具が取れた」
と父が言った。
私は、
「そのうち直さなきゃな」
と思いながら後回しにしていた。
すると先生が、
「ペンチ貸してください」
と、その場で直してくれた。
忙しかったら後でやるので大丈夫ですよー。
そんなふうに笑って。
いや、本当は私がやれよ。
と少し反省した。
でも、そんな気持ちよくやってあげられない。
ベッドの上だけ。
そりゃ、小さなことだって気が付くし
小さなことだって不快だよね。
・・っていう正論と
そんなことくらい気にしなければいい
という感情。
だいたい感情が勝つ私。
でも先生は、いつも責めない。
父の体も少しずつ変わってきた。
自宅に帰ってきてから、
可動域が上がった。
家に帰ってきたら、ゆっくり動かなくなっていく
リハビリ病院が一番、いい場所と思っていた。
でも、違った。
腕の可動域が少し増えた。
痛みやしびれもなくなって
薬も飲まなくてよくなった。
手の離握手が少しできるようになり
自分で握って、スプーンを持てるようになった。
1番目の入院した時の医者に
「リハビリしても意味ない」
と言われた言葉を思い出す。
そんなこと、全然なかったぜって。
ほんの少し手が動くようになるだけで、
できることは驚くほど増える。
この前
移乗リフトのボタンが押せた。
これで、何かできないかなって
私、わくわくした。
自分でできることが増える。
その変化に合わせて、
自助具も調整してくれる。
そして、
ものすごく褒めてくれる。
たった数センチ動いただけでも、
「すごいですね!」
と言ってくれる。
介護をしていると、
できないことや、
足りないことばかりに目が向く。
でも先生は、
できるようになったことを見つけるのが本当に上手だ。
父のことも。
家族のことも。
絶対に責めない。
「大丈夫ですよ」
「いいですよ」
そう言ってくれる。
訪問リハビリの先生って、
体を動かすだけの仕事じゃないんだなと思う。
今の父のできることを増やしてくれる人。
そして、
できたことを一緒に喜んでくれる人だ。

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