外泊3日目。
今日のお昼すぎには、
父は病院に戻る。
私?
もう、父にお腹いっぱい。
父のお願いは、ごもっともで、仕方ない。
それでも、
父のことを気にしていることと、
思いやりを出し尽くした感。
もっと、ありがとうって言ってくれ。
いやっ、ありがとうって言っているよって夫。
そうじゃない。
もっと言ってくれ。足りないんだ。
この、疲れとモヤモヤ。
それ以外に何で埋めたらいいのさ。
父が家に帰ってきてから、
家の中がずっと介護モードだった。
「次は何する?」
「これ大丈夫?」
「ちゃんとできてる?」
私たちの頭の中も、
父のことでいっぱい。
私も母も、
父への文句が増えだす。
「細かいねん」
「そんなん、どうでもよくない?」
って。
そして私は、
母の愚痴にも嫌気がさしてくる。
ギスギスしだす、家の中。
家の空気が、
どんよりしてくる。
外泊3日目。
最終日なのに、
やっぱり穏やかに、
和やかに過ごせない。
そんな午前中。
親戚が、代わる代わる来てくれた。
「大変だったね」
「具合どう?」
って。
「あの話なんだけどさー」
って、
話がはずんでいる。
父が介護を受ける人になっていたのが、
ただの父に戻った気がした。
外の空気が入ってきたことで
なんだか、家の空気が変わった。
そして、いつもなんだかんだ、
父のことを気にしていた。
今、寝てる?
姿勢、大丈夫?
痰は?
何かしてほしいことない?
父、知っているか?
直接じゃなくても、
介護って、気を使っているんだよ。
あなたが、すやすや寝ている時間も、
なんだか落ち着かないんだよ。
家にいると。
でも、
父の部屋に誰かいる。
父と話している。
私たちじゃなくても、
父を見てくれている人がいる。
それだけで、
ずっと張っていた糸が、
少しゆるんだ。
ほっとけるぜー。
父のことを気にしながら、
家のことをするんじゃなくて。
子どものことをしながら、
父の様子を気にするんじゃなくて。
ちょっとだけ、
父を任せられる。
その時間が、
ものすごくありがたかった。
「ああ、家ってこういう場所だったな」
って思った。
病院みたいに、
父のことだけを考える場所じゃない。
父がいて、
子どもがいて、
親戚が来て、
くだらない話をして。
誰かが笑っている。
家って、こういう場所だった。
そして、
父って、こういう人だったわ。
父が帰ってきたことで、
家族みんなが「介護する人」になりかけていた。
でも親戚が来てくれて、
少しだけ、
普通の家に戻れた気がした。
そして、
父は病院に戻って行った。
退院まで、あと2週間。
このときの私は、
これが毎日になることのしんどさを、
まだちゃんと分かっていなかった。

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