お正月を一人で病院で過ごすのは、
なんだかなー。
ということで、
お正月に2泊の外泊の許可をもらった。
退院の2週間前。
受傷してから、7か月目のこと。
外泊することが決まってから、退院前に福祉用具を部屋に運んでもらった。
ベッド、移動用リフト、オーバーテーブル。
父の部屋が、病室みたいになった。
そして、父の担当の看護師、Kちゃんも、いろいろ調整してくれていた。
外泊中、家族ができるだけ大変にならないように、
便処置とお風呂は、外泊前に病院で済ませてくれることに。
家でやる処置は、とりあえず、
陰部洗浄くらい。
ありがたい。
本当にありがたい。
そしてKちゃんが、
「家での過ごし方」
を書いたメモをくれた。
ベッドでの体の姿勢。
除圧の仕方。
食事のこと。
細かいことまで、いろいろ書いてある。
Kちゃんが父をこんなに丁寧に見てくれていたことが分かって、嬉しくなった。
「こういうときは、こうしてください」
みたいに、家族が困らないように。
めちゃくちゃありがたい。
ありがたいんだけど……
全部はできなかったわー。
はしょれるものは、はしょって。
できる範囲で過ごしましたわ。
Kちゃんに言えないけど。
外泊1日目。父、帰宅。
母が介護タクシーで病院まで父を迎えに行く。
そして、
父が家に帰ってきた。
久しぶりの我が家。
病院とは違う空気。
子どもたちの声。
家の中を流れる、いつもの時間。
父は嬉しい。
……と思う。
でも、家族側はというと。
全然、余裕がない。
久しぶりだから、優しくしてあげたい。
気も使ってあげたい。
でも、
俺様の父に
短気な私。
すぐ、イラつく。
もっと可愛くなってくれれば、こっちだって態度が変わるわ。
病院では、困ったらナースコール。
「痰が出た」
「ちょっと体勢を変えてほしい」
何かしてほしいとき、
呼べば、誰かが来てくれる。
でも家には、ナースコールを押したら飛んできてくれる看護師はいない。
いるのは、私と母。
正月イレギュラー参加の、優しさ多めの旦那さん。
そして、小1男子。
加えて、9か月のハイハイ第二子。
なんなら、完母。
しかも、私たちも父としっかり過ごす1日目。
父の介護に慣れていない。
それ、分かってる?
「もっと上!」
食事のときは、万能カフをつけてスプーンを持ってもらう。
何度も言うけど、私たちも慣れていない。
「スプーン、反対!」
「もっときつく!」
「もっと、ベッド起こして!」
……。
分かってるよ。
こっちだって初めてなんだよ。
教えてやっている、みたいな態度。
やってもらっている、の態度に変わってくんないかな。
母、一番大変だったのは夜
父がナースコールを押す。
「痰が出た」
……。
病院なら、看護師さんが来てくれる。
しかも、勤務交代もある。
でも家では、母が対応する。
昼間、気を使って動いたお疲れの母。
一回ならいい。
それが夜中に何度も。
母、寝不足。
父は父で、
「痰が出たんだから呼ぶだろ」
という感じ。
そりゃそうなんだけど。
ここ、病院じゃないんだよ。
「無理なものは、無理」
病院では、スタッフがいる。
看護師さんがいる。
リハビリの先生がいる。
困ったら、いつでも呼べる。
体勢を変えてほしければ、お願いできる。
食事も、必要な介助をしてもらえる。
父にとっては、それが当たり前になっていた。
しかも、
プロにやってもらうことに。
でも、家では違う。
私たちは、
父のためだけにいるわけじゃない。
ご飯も作る。
洗濯もする。
子どものこともある。
家のこともある。
そして、父の介護もする。
父が、
「もっと上げて」
「もっときつく」
と言ってくる。
でも、ちょっと待って。
こっちだって、
次これやってから、これ。
って、頭の中で段取りつけているねん。
そこに、
「これも」
って言ってくると、
それ、この後にやる予定なん。
ちょっと、黙って。
ってなる。
無理だって。
こっちだって、まだ慣れてない。
一回で完璧にできるわけじゃない。
病院の看護師さんみたいにはできない。
父は、病院で「やってもらう」ことに慣れている。
しかも、プロにやってもらうことに。
私たちは、「家で介護する」ことに慣れていない。
そのズレが、ものすごかった。
でも、
父を介護すること自体は、
そんなに難しいことじゃない。
きっと、慣れればできる。
処置だって、陰部洗浄くらい。
それより、
生活の中に、介護が入ってくる。
それが、めっちゃストレスフル。
父には悪いけど、
あなただけのために、私たちがいるわけじゃない。
家には子どももいる。
母にも私にも生活がある。
父の希望を全部、すぐに叶えることなんてできない。
病院と同じことを、家でやるのは無理。
というか、
無理なものは無理。
家に帰ってきたから、飲もう
そして、外泊の夜。
外泊したら、お酒が飲めるってことで、
父、うきうきでLINEを送ってきた。
飲みたいお酒を指定してくる。
あの頃は、自分で飲むこともできなくて、
コップにストローで飲ませてもらっていた父。
それでも、
「もう一杯いいかな」
って、うれしそうに言っていた。
お酒をねだるときだけは、可愛らしかった。
病院じゃ飲めないからね。
母も、この日は気前がいい。
さすが、キッチンドリンカー。
飲めない辛さには、寄り添えるらしい。
母、どんどん注ぐ。
父、うれしそう。
そして、
飲んだら寝た。
慣れない家。
慣れない介護。
それに、お酒。
疲れもあったんだと思う。
「寝たね。よかった。お願いだから、朝まで寝てくれ」
家族が、ほっとした。
外泊1日目が終わった。
父も疲れたと思う。
私たちも疲れた。
でも、
父が家で酒を飲んで、
「もう一杯」
と言って、
そして寝た。
なんだか、
「父が帰ってきてしまったな」
と思った。
家に父がいるって、
思っていたより大変なんじゃないか。
そんなことを実感した1日だった。
でも、外泊はまだ終わっていない。
翌日は、家族みんなで出かけることになった。
7か月前、父のことでお願いをしに行った、あの場所へ。


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